【2026年版】ハイレゾDAP・ポータブル音楽プレーヤー比較10選|通勤の音質を変える

ハイレゾDAP比較10選 ガジェット・暮らし

ガジェット&ホーム担当: hikaku-man

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調査時点: 2026年10月9日(価格・在庫・提供条件は変動します)

ハイレゾDAP(デジタルオーディオプレーヤー)は、CDを上回る解像度の音源を鳴らせる、音楽再生専用の携帯プレーヤーである。30代・現役ITコンサルの僕(hikaku-man)が、Amazonで現在購入できる10機種を、販売ページとメーカー公表のスペックの範囲で比べた。

DAPの商品ページを開くと、まず横文字の洪水が来る。CS43198、AK4499EX、ES9038Pro、R2R、THX AAA-78+。途中から、家電の説明ではなく呪文の一覧を読んでいる気分になる。おまけに、商品名の先頭に受賞歴が付いていたり、型番よりDACチップの名前のほうが目立っていたりする。本体が何なのかを確かめるところから始まる比較記事は、そう多くない。

評価の材料は、メーカーの公表スペックと販売ページの記載だけである。僕が買って耳に当てた話は一行も出てこない。楽天市場のレビューも確かめたが、本体の出品に付いたレビューは今回拾えなかったので、口コミの話も抜きにする。そのかわり「毎日持ち歩けるか」「手持ちのイヤホンやヘッドホンを鳴らし切れるか」「ストリーミングをどう聴くか」を、公表値で確かめていく。

この記事の結論

  • 通勤や移動で毎日持ち歩くならAstell&Kern A&norma SR35。Cirrus LogicのCS43198を4基積み、重さ184g、連続再生は約20時間(Dual DACモード時)とメーカーが公表している
  • イヤホンもヘッドホンも1台で鳴らしたいならFiiO M23。AKMのセパレートDAC(AK4191EQ+AK4499EX)に、外部給電で最大1000mWまで出せる「DESKTOP MODE」を持つ
  • Androidでストリーミングを聴きつつ、R2R方式の音作りを試したいならiBasso DX270。OSはAndroid 13で、12Vの外部電源をつなぐと最大1575mW+1575mW(32Ω)
  • ポケットに入る小型機ならSHANLING M1 Plus。ES9069Qを積み、バランス出力は最大661mW(32Ω)、Wi-FiやAirPlayにも対応する
  • ハイレゾにこだわらず、スマホと音楽を分けたいだけならAMAEONDの約26gのMP3プレーヤーが別枠で候補に入る。ハイレゾ対応の記載はない

ハイレゾDAP比較一覧表

まず10機種を並べる。見てほしいのは「DAC」と「出力・端子」の2列だ。ただし出力は、電圧(Vrms)で公表するメーカーと電力(mW)で公表するメーカーがあり、そのまま横には比べられない。重さや再生時間は、商品データに載っていない機種が多かった。空欄を推測で埋めるより、「記載なし」と書くほうを選んだ。価格はモールと時期で動くので、表示時点の価格で見比べてほしい。

順位 商品 DAC(メーカー記載) 出力・端子 OS・接続 重さ・再生時間 向いている使い方 購入
1位 Astell&Kern A&norma SR35
Astell&Kern A&norma SR35
CS43198×4(左右各2基) バランス出力でハイゲイン時6Vrms、2段階ゲイン 商品データに記載なし 184g、約20時間(Dual DACモード時) 通勤・毎日の持ち歩き
2位 FiiO M23
FiiO M23
AK4191EQ+AK4499EX(セパレート構成) THX AAA-78+×2、DESKTOP MODE時に最大1000mW OSの記載なし、USB Type-C×2(1つは給電専用) 重さの記載なし、30W急速充電(約1時間で80%) イヤホンから机の上のヘッドホンまで
3位 iBasso VGP2026
iBasso VGP2026
(本体はDX270)
20bit R2R+4bitストリングDAC 12V外部電源時に最大1575mW+1575mW(32Ω) Android 13、Snapdragon 665、RAM 4GB 商品データに記載なし 自宅ではヘッドホンも鳴らす
4位 iBasso DX260
iBasso DX260
CS43198×8 3.5mm、4.4mm Android 11、Snapdragon 660、USB-DAC、Bluetooth送受信 229g、123×74.5×17.5mm ストリーミングと持ち歩きの両立
5位 SHANLING ES9069Q
SHANLING ES9069Q
(本体はM1 Plus)
ES9069Q 3.5mm、4.4mm、バランス最大661mW(32Ω) 独自のMtouch 2.0、Wi-Fi、AirPlay、DLNA、Bluetooth 5.2送受信、USB-DAC 重さの記載なし(ポケットサイズをうたう) ポケットに入れて持ち歩く
6位 SHANLING M7
SHANLING M7
ES9038Pro(電流出力モード) 3.5mm、4.4mm、4chフルバランスアンプ Android(バージョンの記載なし)、LDAC 商品データに記載なし 大きな画面で操作したい
7位 FiiO M15S
FiiO M15S
商品データに記載なし 2.5mm、3.5mm、4.4mm(ライン出力などと兼用) Snapdragon 660、USB 3.0 Type-C、Bluetooth、MQA 8倍デコード 商品データに記載なし 端子を使い分けたい
8位 Astell&Kern Kann Max
Astell&Kern Kann Max
クアッドDAC(チップ名の記載なし) 超高出力をうたう(数値の記載なし) OSの記載なし、PCM 768kHz/32bit・DSD512 重さの記載なし(小型化をうたう) 鳴らしにくいヘッドホンも視野に
9位 FiiO M11S
FiiO M11S
商品データに記載なし 2.5mm、3.5mm、4.4mm Android 10、Snapdragon 660、LDAC・LHDC 商品データに記載なし 3種類の端子とLDACを使いたい
10位 AMAEOND 音楽プレーヤー プレーヤー Bluetooth
AMAEOND 音楽プレーヤー プレーヤー Bluetooth
記載なし(「HIFIチップ」との表記) 有線とBluetooth、スピーカー内蔵 MP3・WAV・FLAC・WMA・APE、録音、FMラジオ 約26g スマホと分けたい、語学学習(別枠)

本気でおすすめできるハイレゾDAPランキング

順位は、DACとアンプの構成がどこまで具体的に書かれているか、出力と端子、ストリーミングなど接続の幅、持ち歩くための情報(重さ・再生時間)の4点で付けた。試聴して決めた順位ではない。販売ページとメーカーの記載から読める範囲の評価である。1位から9位はハイレゾDAPで、10位だけはハイレゾ非対応の別枠として載せた。

1位 Astell&Kern A&norma SR35 — 184gで約20時間、通勤カバンに収まる4DAC機

Astell&Kern A&norma SR35

A&normaは、Astell&Kernの音をコンパクトな本体で聴くためのシリーズで、SR35の販売ページには「Hi-Fi Sound on-the-go」というスローガンが掲げられている。持ち歩けるHi-Fi、という宣言だ。

中身で目を引くのはDACの数である。Cirrus LogicのCS43198を左右2基ずつ、計4基積む。メーカーによれば、A&normaシリーズで初めてのQuad DAC構成で、4基で鳴らすモードと2基で鳴らすDual DACモードを切り替えられる。約20時間という連続再生時間は、Dual DACモードで動かしたときの公表値だ。

アンプには、上位のA&ultimaラインで採用された新世代の技術を載せたとある。ゲインはノーマルとハイの2段階で、ハイゲインのバランス出力は6Vrms。繊細なイヤホンと駆動の難しいヘッドホンを使い分ける前提の設計だ。重さは184gで、重量がわかっているハイレゾDAPのなかでは4位のDX260(229g)より45g軽い。

メーカー公表で評価できるところ

  • CS43198を4基積むQuad DAC構成で、Dual DACモードとの切り替えにも対応
  • 184gで連続再生約20時間(Dual DACモード時)。持ち歩きの数字が両方そろっている
  • 2段階ゲインで、ハイゲインのバランス出力は6Vrms

気になるところ

  • OSと対応する配信アプリは、商品データでは確かめられなかった
  • 約20時間はDual DACモード時の値で、Quad DACモードでの再生時間は記載がない
  • 出力が電圧(Vrms)表記のため、mW表記の機種とは単純に比べられない

向いている人: 通勤や移動で毎日持ち歩き、イヤホン中心で聴く人。荷物を重くしたくない人。

向いていない人: 机の上で大型ヘッドホンを外部給電込みで鳴らしたい人。その使い方なら2位のM23か3位のDX270が候補になる。

2位 FiiO M23 — AKMのセパレートDACに、机の上では1000mWの顔を持つ

FiiO M23

M23は、DACの仕事を2つのチップに分けている。デジタルフィルターとデルタシグマ変調をAK4191EQが、アナログへの変換をAK4499EXが受け持つ。メーカーはこれを、AKMの最新世代フラッグシップDACによるセパレート方式と説明している。

もうひとつの特徴が「DESKTOP MODE」だ。本体にある給電専用のType-Cポートに電源をつなぎ、バランス出力とスーパーハイゲインを選ぶと、最大1000mWまで出せる。メーカーの表現は「デスクトップ型のヘッドホンアンプに迫る出力」。外ではポータブル、机に戻ったら据え置き寄り、という二重生活ができる。

アンプはFiiOとTHXが共同開発したTHX AAA-78+を2基。さらにI/V段とローパスフィルター段にOPA1612を2基ずつ、電圧増幅段にOPA1662を2基と、オペアンプの型番まで公表している。ここまで書く会社は、回路図の隅まで読まれる前提で作っているのだと思う。充電は最大30Wの急速充電で、約1時間で80%まで。その1時間で8時間以上の再生ぶんがたまるという。

メーカー公表で評価できるところ

  • AK4191EQ+AK4499EXのセパレートDAC構成
  • 外部給電のDESKTOP MODEで最大1000mW。イヤホンからヘッドホンまで1台で受け持てる
  • 30W急速充電で約1時間80%。充電を忘れた朝にありがたい数字

気になるところ

  • 1000mWは外部給電・バランス出力・スーパーハイゲインがそろったときの値で、電池だけでの出力は記載がない
  • OS、重さ、連続再生時間は商品データに載っていなかった

向いている人: 外ではイヤホン、家では机の上でヘッドホン、と1台を使い回したい人。

向いていない人: 重さを数字で確かめてから選びたい人。商品データだけでは判断できない。

3位 iBasso DX270 — 抵抗344個で音を組み立てるR2R、受賞歴が型番より先に来る

iBasso VGP2026

Amazonの商品名は【VGP2026 SUMMER受賞】から始まり、型番のDX270はそのあとに出てくる。VGPは国内のオーディオ・ビジュアル製品のアワードだ。本体はiBassoのDX270(販売ページでの呼び名は「R2R Ultra」)で、比較表では「iBasso VGP2026」の名前で載せた。楽天やYahoo!の検索では同じ賞を受けた別のiBasso製品も出てくることがあるので、型番を確かめて選んでほしい。

DACは、多くのDAPが使うデルタシグマ型のチップではない。20bitのR2R(抵抗をはしご状に並べ、デジタルの値をそのまま電圧に置き換える方式)と4bitのストリングDACを組み合わせた構成で、高精度な抵抗を344個使う。さらに76個の精密抵抗で直線性を補正しているという。抵抗の個数の話だけで1段落使ってしまった。

回路は8chの完全差動で、ダイナミックレンジ(DNR)は130dB。FPGA Master 3.0とAccusiliconの低ノイズクロックを使い、NOSを含む5種類のフィルターを選べる。出力は、12VのDC外部電源をつないだSuper Gain Modeで最大1575mW+1575mW(32Ω)。OSはAndroid 13で、Snapdragon 665とRAM 4GBを積む。

メーカー公表で評価できるところ

  • 20bit R2R+4bitストリングDACのハイブリッド構成と8ch完全差動回路
  • OSはAndroid 13。バージョンがわかる機種のなかでいちばん新しい
  • 12V外部電源時に最大1575mW+1575mW(32Ω)。フルサイズのヘッドホンも視野に入る

気になるところ

  • 1575mWは12V外部電源時の値で、電池だけでの出力は記載がない
  • 重さ、サイズ、連続再生時間も商品データに載っていない

向いている人: Androidでストリーミングも聴き、家では外部電源でヘッドホンまで鳴らしたい人。R2R方式に興味がある人。

向いていない人: 電源なしで最大出力を求める人。軽さを最優先する人。

4位 iBasso DX260 — CS43198を8基、重さとサイズまで数字がそろう

iBasso DX260

商品名にVGP2024金賞が入っている、iBassoのAndroid機。DACはCirrus LogicのCS43198を8基積む。1位のSR35が同じチップを4基なので、ちょうどその倍になる。

OSはAndroid 11、SoCはSnapdragon 660。USB-DAC機能とBluetoothの送受信に対応し、端子は3.5mmと4.4mm。Bluetoothの受信ができると、スマホで再生した音をDAP経由で有線イヤホンに流す、という使い方もできる。

この機種のありがたいところは、本体の数字が商品データにそろっていることだ。アルミ合金のボディで123×74.5×17.5mm、229g。画面は5.0インチの1080×1920。重さとサイズが両方わかったのは、10機種でこれだけだった。調べる側としては拝みたくなる。

メーカー公表で評価できるところ

  • CS43198を8基積むDAC構成
  • Android 11にUSB-DACとBluetooth送受信。スマホやPCとの組み合わせ方が多い
  • サイズ・重さ・画面の仕様まで商品データで確かめられる

気になるところ

  • 出力(mW)と連続再生時間は商品データに記載がない
  • Android 11は、3位のDX270のAndroid 13より2世代前のバージョン

向いている人: ストリーミングアプリを入れて持ち歩きたい人。PCにつないでUSB-DACとしても使いたい人。

向いていない人: ヘッドホンを鳴らせる出力を、数字で確かめてから選びたい人。

5位 SHANLING M1 Plus — ポケットサイズにES9069Qと661mWを詰めた小型機

SHANLING ES9069Q

Amazonの商品名には「コンパクトES9069Q」とあり、DACチップの名前のほうが目に入る。本体はSHANLINGのM1 Plusで、比較表では「SHANLING ES9069Q」の名前で載せた。楽天やYahoo!の検索では同じチップを積んだ別のUSB DACも出てくることがあるので、M1 Plusの名前を確かめて選んでほしい。

DACはESSの省電力型ES9069Q。小さな本体ながら2段階のゲインを備え、バランス出力で最大661mW(32Ω)をうたう。端子は3.5mmと4.4mm。そして販売ページに並ぶ接続の項目は、10機種でいちばん多い。Wi-Fi、DLNA、AirPlay、Bluetooth 5.2の送受信、USB-DAC、ライン出力、S/PDIFまである。

操作はSHANLING独自の「Mtouch 2.0」で、ジェスチャー操作に対応する。専用アプリのEddict PlayerからSyncLinkで遠隔操作もでき、本体をポケットに入れたまま曲や音量を変えられる。ダイヤル部分のランプはグリーンかブルーで、充電中は赤。光り方まで覚えてしまった。

メーカー公表で評価できるところ

  • ポケットサイズをうたいながら、バランス出力で最大661mW(32Ω)
  • Wi-Fi、AirPlay、DLNA、Bluetooth 5.2送受信、USB-DACと、つなぎ方の選択肢が多い
  • スマホのアプリから本体を操作できるSyncLink

気になるところ

  • 重さ、サイズ、再生時間は数字の記載がなく、「ポケットサイズ」という表現にとどまる
  • OSはAndroidではなく独自のMtouch 2.0。ストリーミングアプリを本体に入れて聴けるかは、商品データからは確かめられない

向いている人: スマホとは別に、小さなプレーヤーをポケットに入れておきたい人。家ではAirPlayやDLNAで鳴らしたい人。

向いていない人: 大きな画面でアプリを操作したい人。

6位 SHANLING M7 — CDプレーヤー譲りのES9038Proを電流出力で鳴らす

SHANLING M7

DACはESSのフラッグシップチップES9038Proで、これを電流出力モードで使う。SHANLINGは2021年に発売したHi-Fi CDプレーヤー「CD3.2 Ver.21」でこのチップを採用しており、そこで得た経験をポータブルに持ち込んだと説明している。

アンプはオペアンプとバッファを組み合わせた「OP+BUF」構成の4chフルバランス。I/V変換にADIのADA4896-2、アンプ部にJ-FETオペアンプのMUSES8920と、こちらも型番がずらりと並ぶ。DAPの販売ページを読んでいると、だんだんオペアンプの名前に詳しくなっていく。役に立つ場面には、まだ出会っていない。

筐体はアルミのCNC削り出しで、側面に波打つラインが入る。画面はSHARP製の5インチ液晶で1920×1080、OSはAndroid、端子は3.5mmと4.4mmで、BluetoothはLDACに対応する。

メーカー公表で評価できるところ

  • ES9038Proを電流出力モードで使うDAC回路
  • OP+BUF構成の4chフルバランスアンプ
  • 5インチ・1920×1080の液晶とAndroidで、アプリの操作がしやすい画面の大きさ

気になるところ

  • 出力、重さ、連続再生時間は商品データに記載がない
  • Androidのバージョンも書かれていない。入れたいアプリが動くかは事前に確かめたい

向いている人: 大きな画面でAndroidアプリを操作したい人。回路の設計で選びたい人。

向いていない人: 重さや電池持ちを比べて決めたい人。判断できる数字が商品データにない。

7位 FiiO M15S — 2.5mm・3.5mm・4.4mmに同軸とラインまで、端子の見本市

FiiO M15S

商品データで目立つのは端子の多さである。2.5mmバランス(バランスライン出力と兼用)、3.5mmシングルエンド(ライン出力・同軸デジタル出力と兼用)、4.4mmバランス(バランスライン出力と兼用)。ヘッドホン端子が3種類あり、それぞれが別の役目も兼ねている。

対応フォーマットの記載も細かい。その一方で、DACチップの名前と出力の数値は、今回参照した商品データに載っていなかった。端子と対応フォーマットはやたら詳しいのに、心臓部の名前がない。履歴書の資格欄はぎっしりなのに、氏名だけ空いているような状態だ。

メーカー公表で評価できるところ

  • 2.5mm、3.5mm、4.4mmの3種類のヘッドホン端子。ライン出力や同軸デジタル出力とも兼用
  • 本体内のデータとUSB DACモードで384kHz/32bit・DSD256(ネイティブ)、USB出力では768kHz/32bit・DSD512
  • SoCはSnapdragon 660で、MQAの8倍デコードに対応

気になるところ

  • DACチップ、出力、重さ、再生時間、OSが商品データでは確かめられない
  • MQAは、主な採用先だった配信サービスのTIDALがFLACへの切り替えを進めたので、決め手にはしにくい

向いている人: 2.5mmのケーブルを持っている人。DAPを据え置きアンプへのデジタル出力元としても使いたい人。

向いていない人: DACの銘柄や出力の数値で選びたい人。

8位 Astell&Kern Kann Max — 名前はMAX、出力の欄は空白

Astell&Kern Kann Max

販売ページの見出しは「Engineered to Powerful Perfection」。超高出力化と小型化の両立、超高出力ながら低ノイズの回路設計、クリアな音像定位を再現するクアッドDACサウンド、と力強い言葉が並ぶ。

ところが、その超高出力が何mWなのか、何Vrmsなのかは、今回参照した商品データに書かれていなかった。名前はMAXなのに、出力の欄は空いている。DACも「クアッドDAC」とあるだけで、チップの名前は出てこない。

確かめられたのは、PCM 768kHz/32bitとDSD512のネイティブ再生への対応と、アンスラサイトグレーの本体にゴールドのPVDコーティングという仕上げくらい。商品データから言えることが少ないので、順位はここに置いた。

メーカー公表で評価できるところ

  • クアッドDAC構成
  • PCM 768kHz/32bit、DSD512のネイティブ再生に対応
  • 高出力と小型化の両立をうたう

気になるところ

  • 出力値、DACチップ名、重さ、OS、再生時間が商品データにない。購入前にAstell&Kernの公式仕様表で確かめたい

向いている人: Astell&Kernのブランドで、鳴らしにくいヘッドホンまで視野に入れたい人。公式の数値を確かめたうえで選ぶ前提で。

向いていない人: 販売ページの情報だけで比較を終えたい人。

9位 FiiO M11S — 3種類の端子とLDAC・LHDCを押さえたAndroid 10機

FiiO M11S

商品名から読み取れるのは、Snapdragon 660、4.4mmバランス・3.5mm・2.5mmの3端子、LDACとLHDC、Android 10。今回参照した商品データでは商品名以外の情報がほとんど取れず、10機種のなかでいちばん材料が少なかった。

LDACはソニーが開発したBluetoothの高音質コーデックで、LHDCもワイヤレスで高いビットレートを狙う方式だ。ワイヤレスイヤホン側が対応していれば、Bluetoothでも情報量の多い音を送れる。

気にしておきたいのは、OSがAndroid 10である点。2019年に出たバージョンで、3位のDX270のAndroid 13より3世代前にあたる。ストリーミングアプリは対応するAndroidのバージョンを引き上げていくことがあるので、使いたいアプリが動くかは事前に確かめておきたい。

メーカー公表で評価できるところ

  • 4.4mm、3.5mm、2.5mmの3端子
  • LDACとLHDCの2つの高音質コーデックに対応
  • Android搭載で、ストリーミングアプリを入れられる

気になるところ

  • DAC、出力、重さ、再生時間が商品データでは確かめられない
  • Android 10は、バージョンがわかるAndroid機のなかでいちばん古い

向いている人: 2.5mmと4.4mmの両方のケーブルを持っていて、Androidで聴きたい人。

向いていない人: 新しいアプリを長く使い続けたい人。

10位 AMAEOND 音楽プレーヤー(Bluetooth対応) — ハイレゾではない。でも約26gで、スマホから音楽を切り離せる

AMAEOND 音楽プレーヤー プレーヤー Bluetooth

ここからは別枠である。販売ページの表現は「CDレベルの体験」で、ハイレゾ対応の記載はない。それでも載せたのは、「ポータブル音楽プレーヤー」を探す人のなかに、音質よりも「スマホと音楽を分けたい」人もいるからだ。販売ページも、SNSの通知や着信に邪魔されずに音楽や語学に集中できる点を推している。

重さは約26gで、1位のSR35(184g)のおよそ7分の1。再生できる形式はMP3、WAV、FLAC、WMA、APEで、画面は1.8インチのTFT。microSDカードで128GBまで増やせる。

機能はやたら多い。スピーカー内蔵、有線とBluetoothの両対応、A-Bリピートと倍速再生、録音、FMラジオ、電子書籍、写真、アラーム。音楽プレーヤーというより、ポケットに入る十徳ナイフに近い。有線イヤホンが付属し、保証は1年とある。

販売ページで評価できるところ

  • 約26gの軽さ。ジムや散歩でも邪魔になりにくい
  • FLACを含む5形式の再生と、microSDで128GBまでの拡張
  • A-Bリピート、倍速再生、録音、FMラジオと、語学学習に使える機能がそろう

気になるところ

  • ハイレゾ対応の記載がなく、DACチップやBluetoothのコーデックも書かれていない
  • 「HIFI音質」という表現を裏付ける具体的な仕様は、販売ページに見当たらない

向いている人: 通知に邪魔されずに音楽や語学を聴きたい人。軽さを最優先する人。

向いていない人: ハイレゾ音源を高音質で聴きたい人。その目的なら1位から9位のなかから選んでほしい。

選び方ガイド|ハイレゾDAPで迷う5つの分岐点

1. DACは銘柄より「何を何基、どう組んでいるか」を見る

今回の機種に載っているDACを並べると、Cirrus LogicのCS43198(SR35に4基、DX260に8基)、AKMのセパレート構成(M23)、ESSのES9038Pro(M7)とES9069Q(M1 Plus)、そしてR2R方式(DX270)になる。チップの銘柄ごとに音の傾向が語られることは多いが、同じチップでも、何基をどう組むか、アンプと電源をどう設計するかで鳴り方は変わる。

スペック表では、チップ名に加えて、基数やセパレート構成、電流出力、フルバランスといった構成の書き込みまで読むと違いがつかみやすい。最後は好みなので、できれば店頭で手持ちのイヤホンをつないで聴いてから決めたい。

2. 出力は単位と条件まで読む。mWとVrms、外部給電のあり・なし

出力の公表値は、メーカーによって書き方がばらばらだ。SR35はハイゲイン・バランス出力時の6Vrms(電圧)、M1 Plusはバランス出力で661mW(32Ω時の電力)。M23の1000mWとDX270の1575mW+1575mW(32Ω)は、どちらも外部給電時の値である。

mWはつないだ機器の抵抗値(インピーダンス)で変わるので、条件がそろっていないと横に比べられず、電圧表記の機種とはなおさら比べにくい。感度の高いイヤホン(IEM)は小さな出力でも十分な音量が出るものが多く、出力の大きさで差が出るのは、インピーダンスが高い、あるいは能率の低いヘッドホンを鳴らすときだ。外部給電時の最大値は、電池だけでも出せるとは限らない。外で大型ヘッドホンを鳴らすなら、電池駆動時の出力をメーカーの仕様表で確かめておきたい。

3. Androidか独自OSかで、ストリーミングの聴き方が変わる

商品データでAndroid搭載が確かめられたのは、DX270(Android 13)、DX260(Android 11)、M11S(Android 10)、M7(バージョンの記載なし)の4機種。Androidならスマホと同じようにストリーミングアプリを入れられるが、古いバージョンではアプリ側の対応が先に終わることがある。M1 Plusは独自のMtouch 2.0で、そのかわりWi-Fi、AirPlay、DLNAに対応する。SR35、M23、M15S、Kann MaxはOSの記載が商品データになかったので、使いたい配信サービスが決まっているなら、メーカーの仕様表で対応を確かめてから選びたい。

4. 端子は手持ちのイヤホンやケーブルに合わせる

DAPのバランス接続では、4.4mmが広く使われている。商品データで4.4mm端子の記載があったのは、DX260、M1 Plus、M7、M15S、M11Sの5機種で、M15SとM11Sは2.5mmのバランス端子も持つ。変換アダプターで合わせる手もあるが、手持ちのイヤホンやケーブルがそのまま挿さる機種を選ぶほうが話が早い。

5. 持ち歩くなら重さと再生時間。ただし公表値はそろっていない

毎日カバンに入れるなら、重さと再生時間は音の次に気にしたい数字だ。ところが商品データで重さがわかったのはSR35(184g)、DX260(229g)、AMAEOND(約26g)の3機種だけで、連続再生時間はSR35の約20時間(Dual DACモード時)しか載っていなかった。M23は再生時間のかわりに、30W急速充電で約1時間80%という充電の速さを公表している。埋まらない欄は、メーカーの仕様表で確かめてから決めてほしい。

まとめ|迷ったらこの3台

持ち歩き中心か机の上でも使うかを決め、手持ちのイヤホンやヘッドホンの端子と鳴らしにくさを確かめ、最後にストリーミングの聴き方でOSを選ぶ。この順番で進めると迷いにくい。そのうえで3台を挙げておく。

総合1位 Astell&Kern A&norma SR35 — 毎日持ち歩くならこれ

CS43198を4基積み、重さ184g、連続再生は約20時間(Dual DACモード時)。持ち歩きに必要な数字が商品データでそろう、数少ない1台である。使いたい配信サービスがあるなら、対応状況だけは公式で確かめておきたい。

総合2位 FiiO M23 — 外ではイヤホン、家ではヘッドホンの二刀流

AKMのセパレートDACに、外部給電で最大1000mWのDESKTOP MODE。30W急速充電で約1時間80%まで戻せる。1台を外と机の上で使い回したい人に向く。

総合3位 iBasso DX270 — AndroidとR2Rを両方ほしい人に

Android 13でストリーミングアプリを入れられ、DACは20bit R2R+4bitストリングDAC。12V外部電源時は最大1575mW+1575mW(32Ω)。購入時はDX270の型番を確かめてほしい。

小さく軽く、つなぎ方の多さで選ぶなら5位のSHANLING M1 Plus、ハイレゾにこだわらずスマホから音楽を切り離したいだけなら10位のAMAEOND、という選び方もある。

よくある質問

スマホにUSB-DACをつなぐのと、DAPを買うのはどちらがいい?

何を優先するかで分かれる。荷物を1つ減らしたい、いつものアプリをそのまま使いたいなら、スマホにUSB-DACをつなぐほうが手軽だ。スマホの電池を音楽で減らしたくない、通知に邪魔されたくない、出力の大きいアンプを持ち歩きたいならDAPに分がある。DX260、M1 Plus、M15SのようにUSB-DACとして使えるDAPもあるので、家ではPCにつないでDAC代わりにする使い方もできる。

ハイレゾ音源とは?CDと何が違う?

国内では、JEITA(電子情報技術産業協会)の定義で、サンプリング周波数と量子化ビット数のどちらかがCD(44.1kHz/16bit)を上回り、もう一方もCD以上の音源をハイレゾと呼ぶ。今回のDAPでは、M15Sが本体内のデータで384kHz/32bitまで、DX270、M1 Plus、Kann Maxが768kHz/32bitとDSD512までの対応をうたっている。ただし音源そのものがハイレゾでなければ、プレーヤー側の対応範囲が広くても情報量は増えない。

4.4mmバランス接続のメリットは?

左右のチャンネルでグラウンド(マイナス側)を共用しないため、左右の信号が干渉しにくく、クロストークを抑えられる。一般にバランス出力のほうが大きな出力を出せる設計が多く、今回もSR35の6VrmsやM1 Plusの661mWはバランス出力時の値として公表されている。使うには、4.4mmプラグのイヤホンかケーブルが要る。

R2R DACは普通のDACと何が違う?

多くのDACチップはデルタシグマ方式で、デジタル信号をいったんビット数の少ない高速な信号に変換してからアナログに戻す。R2Rは、抵抗をはしご状に並べ、デジタルの各ビットに重みを付けて直接電圧を作る方式だ。抵抗の精度がそのまま変換の正確さを左右するため、DX270は高精度な抵抗344個に加え、補正用に76個の精密抵抗を使っている。どちらが良い音かは好みの問題で、方式だけで優劣は決まらない。

ハイレゾDAPは、スペック表の横文字に気後れしやすい買い物である。でも見る順番は決まっていて、持ち歩くか、何を鳴らすか、どう聴くか、の3つだけだ。公表値で埋まらない欄はメーカーの仕様表で埋め、できれば店頭で手持ちのイヤホンをつないでから決めてほしい。スマホとは別に音楽専用の1台を持つと、通勤や移動の時間に何を聴くかの選び方まで変わってくる……たぶん。

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